福岡地方裁判所 昭和27年(行)28号 判決
原告 進野精生
被告 福岡国税局長 外一名
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、「被告が昭和二十七年五月十九日附を以てなした原告の昭和二十五年度分の所得金額を金六十万七千円とする所得税審査決定中、金三十七万八千百三十七円二十八銭を超える部分は、これを取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として次のように述べた。
「原告は、肩書住所地で玩具及び果物販売業を営んでいたが、営業不振のため昭和二十五年五月以降玩具の販売を中止したもので、同年度の利益としては別紙(一)損益計算書記載のとおり金三十七万八千百三十七円二十八銭を得たにすぎない。よつて原告は、右金額を課税総所得金額として同年度分の所得金額の確定申告をしたところ訴外田川税務署長から、政府において右金額を金六十七万千円と更正した旨の通知を受けたので、直ちに同署長に対して再調査の請求をしたが、右請求は、所得税法第四十九条第四項により被告に対する審査の請求とみなされ、被告は、昭和二十七年五月十九日附を以て、右請求の一部についてその理由があるものと認め、昭和二十五年度の原告の課税総所得金額を金六十万七千円と認定する旨の決定をなし、原告は、同月三十一日右決定通知書を受け取つた。
しかしながら、原告が昭和二十五年中に得た利益は、前述のとおり金三十七万八千百三十七円二十八銭にすぎず、被告の決定額は、それよりも金二十二万八千八百六十二円七十二銭上廻るものであるから、原告は、税額金十一万六千百三十二円を余分に徴収されることとなつて到底承服し難い。殊に、昭和二十六年度分の課税総所得金額については、原告の確定申告に対する政府の更正額は、金四十八万千三百円であることを考えれば一般物価指数や所得の漸増にかんがみ、前年度の原告の所得が金三十七万八千百三十七円二十八銭にすぎなかつたことは、当然首肯され得るところと信ずる。よつて、請求の趣旨記載の判決を求めるため本訴に及んだ。」
なお、昭和二十五年度の原告の所得金額に関する被告の主張に対し次のように述べた。
「被告の所得額算定方法には、以下詳述するように原告にとつて納得し難い点が多い。」
(一) 売上高について。
被告算定にかかる利益率の中には、果物二割七分、諸口二割四分のように実際より高すぎるものがある。
(二) 修繕費について。
原告が営業の用に供している家屋は、他人の所有にかかるものであり、しかも古くなつて天井を張り替えなければ、すす等が落ち商品の美観、新鮮度等が低下する状態にあつた上、昭和二十四年中に何者かに雨戸を取り外され、その際果物が盗難に遭つた次第である。これを修繕するに要した費用は、当然所得の計算上必要な経費に算入すべきものと考える。
(三) 雑収入について。
(1) 原告が昭和二十五年中に筑豊青果株式会社から歩戻金を受け取つたことは、これを認めるが、その金額は、被告が主張する金一万二千二百円三十七銭よりも少いものである。
(2) 原告が同年中に少くとも金三千八百四十円の空箱を売却、贈与又は自家消費したであろうとの推測に基き、被告が右金額を原告の雑収入に算入したことも承服し難い。原告が仕入れた果物の中には西瓜、バラみかん、地物の柿等箱入りでないものが多かつたし、当時は倉庫もなかつたから空箱を野天に積み重ねておつたので、風雨等のため破損、腐敗等の害を蒙つたものも多かつたのである。また空箱の中には、甘藷、栗、鶏卵等を焼いたり茹でたりして販売するため、燃料として使つたり、商品陳列用の台として使つたものもある。被告は、かような事情を少しも考慮していないのである。
もつとも、(二)商品仕入高、(四)雑費、(五)利子及び(六)減価償却費に関する被告の主張事実は、これを認める。
なお、昭和二十五年度分の原告の所得について、田川財務事務所長の調査に基く福岡県知事の認定額を援用する被告の主張は理由がない。右認定額が被告主張どおりであること、原告が昭和二十六年度の第一種事業税を分割納入したい計画でいることは、これを認めるが、この認定額は、未だ裁判所における争訟を経て判決で是認されたわけのものでもないし原告としては、もとよりこれに承認を与えたことはない。」と述べた(立証省略)。
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として次のように述べた。
「原告主張の請求原因事実は、左の点を除きすべてこれを認める。
しかし、原告が営業不振で昭和二十五年度には金三十七万八千百三十七円二十八銭の利益をあげたにすぎぬとの点は、これを否認する。すなわち原告の確定申告には、記載不完全の帳簿に基き算定されたふしがあり、売上高等の収入につき脱漏、虚偽、計算違いもあるし、また必要経費として計上すべからざる出費をも計上している等、そのまま採用し難い点が多いことは、後述のとおりである。これにひきかえ、被告が昭和二十五年度分の原告の課税所得総額を金六十万七千円と算定したのは、被告係官において原告提出にかかる帳簿全部につき精密に調査して得られた確実な資料に基くものであつて、何等原告主張のように不当なものではない。しかのみならずその後の被告の調査の結果判明した所得をも加えて計算すると、原告は、同年度において別紙(二)損益計算表記載のとおり金六十三万九千二百四円二十二銭の収入をあげており、これが同年度の原告の課税総所得金額となるべき筋合であるから、前記被告の決定額は、むしろ低きに失するものといわなければならない。
かように同年度の原告の収益額について原告の主張と被告の認定とが喰い違う理由を、各収支項目別に明らかにすれば次のとおりである。
(一) 売上高(原告申告額金三百四十五万六千六百八十二円八十六銭被告認定額金三百六十四万七千七百二十一円)について。
原告は、目切れ腐敗損を考慮し同年度の商品仕入高統計を金二百八十八万五百六十九円五銭と算定し、これに対する推定利益率二割による額を右に合算して居るが、右は真実の売上高を示すものではない。なお、原告の帳簿には同年度の売上高金三百三十万四千百十円と記載されているが、これには伝票記載洩、女店員の窃取、家事使用等諸種の原因に基く脱漏があることは、原告自身が被告の調査の際に認めていたところである。これにひきかえ被告の認定額は、玩具、菓子、牛乳、果実等の各商品の品目毎に原告から仕入価格と売上価格とを聴いて利益率を求め、更に原告の記帳により腐敗による売却不能の商品を計算の基礎から除いた上各品目毎の売上総額を算出し、これを合算して得られたより合理的なものである。
(二) 商品仕入高(原告申告額金二百九十六万三百九十二円五十五銭被告認定額金二百九十六万二千二百六十七円五十五銭)について。
原告申告額と被告認定額との差額金千八百七十五円の中金三十円は、被告において原告の計算違いを訂正したものであり、残余の金千八百四十五円は家事消費分であつて、原告はこれを商品仕入高から除外して居るが、右は、所得税法施行規則第九条の三により消費の時における其の資産の価額を総収入金額に算入すべきものである。
(三) 年末棚卸高(原告申告額金十三万三千五十八円五十銭被告認定額金十三万六千九十六円)について。
原告申告額と被告認定額との差額金三千三十七円五十銭は、被告において原告の計算違いを訂正したものである。
(四) 修繕費(原告申告額金四万三千五百七十五円被告認定額金千六百二十円)について。
原告申告額中金四万千九百五十五円は、雨戸及び天井の張替費用に相当するものであつて、被告は、右を同規則第十一条に該当する資本的支出であり、耐用年数十五ケ年で減価償却すべきものと認めて計算しこれを昭和二十五年度の必要な経費に算入しなかつた。
(五) 雑費(原告主張額金一万三千百四十六円八十五銭被告認定額金九千八百五十円)について。
原告申告額中金千三百九十六円八十五銭は、利息の支払分であるから、被告は、これを利子費目において別途に計上すべきであると考えて本費目から除外した。また原告主張額中金千九百円のメーターの取付費用は同規則第十条第二項第一号に該当する固定資産であるから、被告は、これも所得の金額の計算上必要な経費に算入しなかつた。
(六) 利子(原告不計上被告認定額千二百七十二円八十五銭)について。
原告申告の支払利息額千三百九十六円八十五銭の中には、支払期未到来の利子金百二十四円が含まれているから、之は除外すべきである。
(七) 減価償却費(原告申告額金四千百十円九十三銭被告認定額金三千百十六円)について。
被告の認定額は、原告の全減価償却資産について所得税法第十条第二項、第十条の五、同法施行規則第十二条の六第一項、第三項、同法施行細則第一条、第三条第一項第一号、第二項、第七条により合理的に算出したものであつて、原告の主張額は過大に失する。
(八) 雑収入(原告申告額金四千七百四十二円被告認定額金二万七千九百十四円三十七銭)について。
原告の申告額は、帳簿の記載の辻棲を合わせるために計上したもので、何等合理的根拠のあるものではない。被告の認定額のうち金三百十六円は、本件審査の決定においても認定していたもので、そのうち金三百円は空箱売却代金であり、金十六円は利子収入である。残余の金二万七千五百九十八円三十七銭は、右決定後の調査の結果判明したもので、その内訳は次のとおりである。
(1) 金一万二千二百円三十七銭――原告が昭和二十五年中に筑豊青果株式会社田川市場との間になした青果物の総取引高金百二十二万三十八円四十銭に対する一分の割合による歩戻金として、原告が同市場から受け取つたもの。
(2) 金一万五千五百五十八円――原告が同年中に加木商店外九商店との取引によつて値引を受けた額の総計。原告は、これを買掛金として支払つていないのに仕入金から控除せずに計上しているため、利益金額に脱漏を生じているから、被告は、これを雑収入として計上したのである。
(3) 金三千八百四十円――原告が同年中に株式会社松本商店から仕入れたりんご二百四十二箱みかん四十二箱の代価を、当時の一般市場での売買価格、りんご箱一箱金十五円、みかん箱一箱金五円の割合により算出したもの。原告の同年中の青果物総仕入高は、金百六十二万五千七百九十三円で、松本商店との取引はその一部たる金三十五万四千八百六十五円にすぎないから原告が同年中に少くとも金三千八百四十円の空箱を売却、贈与又は自家消費したであろうことは、推測するに難くない。よつて被告は、所得税法第十条第一項、同法施行規則第九条の三により右金額を雑収入に計上した。
(九) 雑損失(原告申告額金六千円被告認定額金五千二百八十円)について。
原告は、破損廃棄した机と鏡を取得価格で計上しているが、いずれも耐用年限を経過したものであるから、被告は現在価格で算定した。
因みに、訴外福岡県知事は、当初原告に対し昭和二十六年度分の第一種事業税を賦課した際は、同税額算定の基礎となる昭和二十五年中の原告の事業所得額を金六十四万円と算定していたが、その後原告の異議申立を一部認容して、右所得額を金六十二万二千円と認定する旨の決定をなし、且つ昭和二十八年十一月十八日原告にあてて右の旨の通知を発送したところ、これに対し原告からは、右認定額に基く課税額金七万四千六百四十円を分割納入したい旨の申入があつただけで、右認定そのものは、これを承認しているのである。そして右県知事の認定額は、田川財務事務所長において被告や田川税務署長とは別個に調査した結果に基くものであるが、前記被告の認定額とは大差なく、むしろ後者の方が低いのであるから、かような比較の点から考えても、被告の本件審査の決定には、原告の昭和二十五年度の所得を不当に高く見積つた違法があるものとはいえない。
よつて、右審査決定中の課税総所得金額認定が不当であるとして、これが変更を求める原告の本訴請求は、失当であるといわなければならない。」と述べた(立証省略)。
三、理 由
原告は、昭和二十五年頃田川市において玩具及び果物販売業を営んでいたこと、原告は、同年度分の所得税につき課税総所得金額を金三十七万八千百三十七円二十八銭として確定申告をしたこと、しかるにこれに対する訴外田川税務署長の更正通知額は金六十七万千円であり、原告は直ちに再調査の請求をしたが、右請求は、所得税法第四十九条第四項により被告に対する審査の請求とみなされ、被告は、昭和二十七年五月十九日附を以て、右請求を一部理由があるものと認め、右課税総所得金額を金六十万七千円と認定する旨の決定をなし、原告は、同月三十一日右決定書を受け取つたことは、いずれも当事者間に争いがない。
しかるに原告は、昭和二十五年度分の所得税の課税総所得金額たるべき同年中の原告の利益額は、確定申告どおり金三十七万八千百三十七円二十八銭にすぎなかつたから、被告の決定額金六十万七千円は不当であると主張するが、被告は、右事実を否認し、原告は同年中に少くとも金六十三万九千二百四円二十二銭の利益をあげているから、被告の決定額はむしろ低きに失すると抗争するので、以下この点につき判断する。そして所得税法第九条第一項第四号によれば、原告のような商業を営む者の納付すべき所得税の課税標準たる総所得金額は、その年中の総収入金額から必要な経費を控除してこれを定むべきものであるから、まず昭和二十五年中の原告の総収入金額を認定し、次にこれから控除さるべき必要経費額を算定することとする。
一 総収入金額の認定
(1) 商品売上高について。
証人山本昇の証言、並びに、右証言によつて真正に成立したものと認められる乙第二号証の一、二によれば、被告は、原告から本件審査の請求があつたので、宇留島一雄、山本昇及び石川家成の三名を構成員とする諮問機関たる協議団に原告の昭和二十五年中の所得を調査させたこと、右協議団は、昭和二十七年二月五日及び六日の両日にわたり、原告から任意の供述と商業帳簿類の提出を受けて右調査を遂げたこと、そして昭和二十五年中の原告の商品売上高は、原告の帳簿の記載どおりに認定した各商品別の年間総仕入金額から、腐敗等により売却不能になつたと考えられる分の推定価額を控除し、更に同年の年度始め及び年度末の棚上表と原告の供述に基き当該商品毎に仕入高と売上高を求めて算出された概算利益率による利潤額を加算して、各商品別に年間の売上高を求め、最後にこれらを総計して金三百六十四万七千七百二十一円と認定されたことを窺うに足りる。そして、右協議団による調査及び算出方法は公正且つ合理的なものであると考えられるから一応右認定額を以て妥当な原告の昭和二十五年中の商品売上高と認めなければならない。原告本人訊問の結果、並びに、これにより真正に成立したものと認められる甲第一乃至第五号証、中右認定に反する部分は、これを信用することができない。
(2) 年末棚卸高について。
乙第二号証の一、二によれば、原告の帳簿には昭和二十五年の年末棚卸高合計は金十三万三千五十八円であると記載されているが、それは計算違いであつて、右帳簿に基き各商品の棚卸高を正確に合計すると金十三万六千九十五円になることが窺われるから、一応右金額が原告の同年末の棚卸高として合理的に算出された結果とみなければならない。甲第三及び第五号証中右認定に反する部分は、当裁判所の信用し難きところである。
(3) 雑収入について。
(イ) 成立につき争いのない甲第十及び第十二号証によれば、原告は、昭和二十五年中に筑豊青果株式会社田川市場から総額金百二十二万三十八円四十銭の青果物を買い上げ、これに対する一分の割合による歩戻金として同市場から金一万二千百九十九円五十四銭を受けたことが認められるから、右金額を昭和二十五年中の原告の収入に算入しなければならない。
(ロ) 次に被告は、原告は、昭和二十五年中に少くとも金三千八百四十円相当の果物空箱を売却、贈与又は自家消費の用に供したと推測されるから、右金額を原告の同年中の収入に算入すべきであると主張し、原告は、仕入果物中には箱入りでないものも多かつた上、多くの空箱は、破損腐敗したし、また燃料や陳列台として用いたものもあるとて、右金額を争うので、この点につき判断する。原告が昭和二十五年中に筑豊青果株式会社田川市場から仕入れた青果物が総額金百二十二万三十八円四十銭に達することは、既に認定したところであり、また、被告主張事実中、原告は、同年中に株式会社松本商店等からも相当額の青果物を仕入れたこと、これら仕入青果物の空箱の一部は、原告がこれを売却、贈与又は自家消費したことは、原告において明らかに争わぬから、これを自白したものとみなすべきである。それ故、かりに前記原告主張にかかる一切の事情を考慮に入れたとしても、同人が昭和二十五年中に売却、贈与又は自家消費の用に供した青果物空箱の代価が、少くとも被告主張額金三千八百四十円にのぼることは、当然推測され得るところであり、右認定を覆すに足る証拠は存しない。
(ハ) なお被告は、原告は、昭和二十五年中に加木商店外商店との取引によつて総計金一万千五百五十八円の値引を受け、これを買掛金として支払つていないのに、仕入金から控除せずに計上していると主張するが、右事実を認むべき格別の証拠は存しない。その他同年中の原告の雑収入として計上すべき収益の存在については、何等被告において主張、立証しない。
(4) そこで、昭和二十五年中の原告の総収入金額は、前認定の商品売上高、年末棚卸高、歩戻金及び処分空箱代価を合計し、金三百七十九万九千八百五十五円五十四銭と認定すべきものである。
二 必要経費額の認定
(1) 前認定の昭和二十五年中の原告の総収入金額から控除さるべき同年中の必要経費中、左記各項目の額については、当事者間に争いがない。
(イ) 商品仕入高 金二百九十六万二千二百六十七円五十五銭
(ロ) 給料支払額 金二万二千二百九十円
(ハ) 広告宣伝費 金千四十九円
(ニ) 商品運搬費 金千三百七十三円
(ホ) 水道光熱費 金二万三千百七十二円二十五銭
(ヘ) 事務用品費 金七千八百三十七円
(ト) 消耗品費 金五万四百五十八円五十銭
(チ) 通信費 金五千五百三十九円
(リ) 公租公課 金七万六千七百九十二円
(ヌ) 利子 金千二百七十二円八十五銭
(ル) 雑費 金九千八百五十円
(ヲ) 減価償却費 金三千百十六円
以上合計 金三百十六万五千十七円十五銭
(2) 修繕費について。
原告が、昭和二十五年中に必要経費として計上さるべき修繕費として少くとも金千六百二十円を支出したことは、当事者間に争いがない。なお右の外、原告が同年中その店舗の用に供している建物の雨戸及び天井を張り替え、そのために若干の支出をしたことは、当事者間に争いがないが、右支出がいわゆる資本的支出ではなく、必要経費の性質を有するものであるとの事実は、これを認めるに足る証拠がない。
(3) 雑損失について。
前掲乙第二号証の一、二によれば、原告は、帳簿上昭和二十五年中の雑損失額を金六千円と計上し、そのうち牛乳瓶の破損に基く損失を金四千八百円、ガラスの破損に基く損失を金四百円とし、総計金六千円より以上の金額を差し引いた差額金八百円は、机及び鏡の廃棄に基く損失であると主張し、右机と鏡とは取得価格で計上しているけれども、右物件は、いずれも償却年数を経過したものであるから、被告は、残存価額金八十円で計算し、なお、その余の損失額については、右原告の記帳どおりに認定したことが認められる。そして、右被告の認定は、一応合理的と考うべきであるから、同年度の原告の雑損失は、被告主張どおり合計五千二百八十円と認定すべきものである。
(4) かくて、昭和二十五年中の原告の総収入金額から控除すべき必要経費額は、前掲当事者間に争いのない支出項目額、前認定の修繕費及び雑損失額を合計し、三百十七万千九百十七円十五銭と認定するのが相当である。
以上要するに、原告が納付すべき昭和二十五年度分の所得税の課税標準たる総所得金額は、前認定の同年中の総所得金額金三百七十九万九千八百五十五円五十四銭から右必要経費額合計金三百十七万千九百十七円十五銭を控除した金六十二万七千九百三十八円三十九銭と認定すべきものであるから、原告の同年度分の所得金額を金六十万七千円とした本件所得税審査決定額は、むしろ低きに失するものといわなければならない。
よつて、右決定額が高きに失すると主張して、これが変更を求める原告の本訴請求は、失当であるからこれを棄却することとし、なお訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 鹿島重夫 大江健次郎 戸根住夫)
別紙(一)
損益計算書(原告主張の分)
損費
金額
収益
金額
商品仕入高
2,960,392.55
売上高
3,456,682.86
営業費
―
年末棚卸高
133,058.50
給料
22,900.00
雑収入
4,742.00
広告宣伝費
1,049.00
運搬費
1,373.00
水道光熱費
23,172.25
修繕費
43,575.00
事務用品費
7,837.00
消耗品費
50,458.50
通信費
5,539.00
公祖公課
76,792.00
雑費
13,146.85
減価償却費
4,110.93
雑損失
6,000.00
当年純利益(課税総所得金額)
378,137.28
3,594,483.36
3,594,483.36
別紙(二)
損益計算書(被告認定の分)
損費
金額
収益
金額
商品仕入高
2,962,267.55
売上高
3,647,721.00
営業費
―
年末棚卸高
136,096.00
給料
22,290.00
雑収入
27,914.37
広告宣伝費
1,049.00
運搬費
1,373.00
水道光熱費
23,172.25
修繕費
1,620.00
事務用品費
7,837.00
消耗品費
50,458.50
通信費
5,539.00
公祖公課
76,792.00
利子
1,272.85
雑費
9,850.00
減価償却費
3,116.00
雑損失
5,280.00
当年純利益(課税総所得金額)
639,204.22
3,311,731.37
3,811,731.37